断熱性

断熱性一熱を伝えにくいということ

冷暖房に使用されるエネルギー消費が、環境に対して大きな影響力をもつことが明らかになって以来、建築物の断熱性能向上は、エネルギー消費の低減に大きな役割を果たすものとして注目されています。

1990年代に入り、米国やカナダは、建築物のエネルギー使用を最小限にとどめることを目的に、建物外壁の断熱施工と設備システムのエネルギー効率を定め、住宅エネルギー規準を設定。冷暖房時のエネルギー使用は、建物の外壁の断熱性能の影響を強く受けるため、すべての建築資材の断熱性能が算定されました。そのため、設計者は、構造耐力などに加え、断熱性能を設計の基本条件とし、性能規準を満たす資材を選択することが求められています。

ここでは、断熱性能の面から木材とスチール材の性能を比較し、2×4住宅における違いを明らかにしてみます。

スチール製より、「断熱材51mm分」熱を伝えにくい

米国とカナダの研究機関は、木製たて枠工法の壁とスチール製たて枠を使った壁の実物大モデル(開口部や隅角部などの要素を取り除き、単純化させたもの)により、断熱性能を比較。異なる建築システムの断熱性能を比較できる[実効R値]によると、木製がスチール製に比べ、著しく断熱性能が高いことが判明しました。

試験結果によれば、木製たて枠2×6の枠組壁の断熱性能(※グラフのA参照)をスチール製の枠組壁で実現しようとすると、厚さ51mmの発泡樹脂断熱材を外側に付加する必要があります(※同B参照)

また、壁面の各部位の断熱性能についても、木製たて枠工法の壁がスチール製たて枠を使った壁を大幅に上回っています。

木製たて枠の壁とスチール製たて枠を使った断熱性能比較

 

木製たて枠の壁とスチール製たて枠を使った壁の各部位の断熱性能比較 

 

環境破壊の要因となる発砲樹脂系断熱材が必要なスチールハウス

赤外線サーモグラフィーを用いて、スチールハウスの壁の室内側表面温度分布を測定した実験報告例によると、通常のスチールハウスの場合、スチールの枠材がある位置の温度 C(※図参照)が、枠材がない部位 D よりも、4℃から5℃も低くなっているのに対し、外気側に厚さ51mmの発泡樹脂系断熱材を施工すると、その温度差が2℃に減少 E F。発泡樹脂系断熱材がスチール枠材の熱伝導低減に有効であることがわかります。

しかし、木製2×4工法の場合は、外気側断熱材がなくても、枠材による表面温度低下は0.5℃から1℃の範囲内であることが、NAHB(全米ホームビルダー協会)の報告などから知られています。

また、スチール枠材がある箇所に筋のようにできる「ゴーストマーク」と呼ばれる室内側仕上げ壁面の汚れをさけるためにも、発泡樹脂系断熱材の外側施工が不可欠です。つまり、木製2×4工法と同等の断熱性能を達成するために、スチールハウスは追加のコストを要するのです。さらに、発泡樹脂系断熱材の原料となる化石燃料の消費や、副産物のHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)がオゾン層を破壊する要因となることも、環境保全の観点から無視できない重要な問題です。

これらの実験室レベルの試験とは別に、実大規模の住宅を使って各種のデータ収集も試みられていますが、総じてスチール製たて枠を使った施工部位の断熱性能は実験室レベルのデータを下回るケースが多く、これらを検証するため、米国の試験機関で実施されたシミュレーション試験では、壁全体としてみるとき、スチールハウスの実効R値は、木造の場合に比べ、40%以上低いという結果が出ています。

 

断熱仕様の異なるスチールハウスの室内側表面温度比較(サーモグラフィックテストの結果)

R値の単位は[ft2h°F/Btu]で表示され、日本での一般的な熱貫流率(K値[Kcal/m2h°C])との関係はR≒1/4.9kとなる。

建築物の省エネに関する制度としては、カナダに、National Energy Code for Buidlings(建築物に関する全国的なエネルギー法、略称「NECB」)があり、また、 合衆国においては、米国建築審議会(Council of American Building Officials、 略称「CABO」)のモデル・エネルギー法(Model Energy Code)があり、連邦政府の法律では、1992年にエネルギー政策法(Energy Policy Act)の形で、モデル・エネルギー法が定める最低限の断熱条件に合致するか、またはこの条件を超えるように すべての州法に求めている。