
対談

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- 医療法人社団 新日鐵八幡記念病院
- 総務部長
- 藤田 志朗 氏
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- 辰巳住研株式会社
- 代表取締役
- 篠塚 修 氏
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少子化が進む中、国の施策の柱ともなっている「子育て支援」。新日鐵八幡記念病院では、女性職員の希望から院内保育所「たけのこ」を開設した。今回は、新日鐵八幡記念病院の総務部長 藤田志朗氏と、設計を担当された辰巳住研株式会社 代表取締役 篠塚修氏に、病院経営において保育所が担う役割について語っていただいた。
「働く女性を応援する」ことが人材確保のカギになる
― 院内保育所「たけのこ」設立のきっかけについて、お話ください。
藤田まず始めに、医療の現場がきつい、厳しいものであるということをお話ししておきたいですね。特に私どもの病院は急性期病院で、重篤な患者に対応しています。適切な医療を施し、次の医療機関に移っていただくために、患者への手厚い医療が求められていて、患者7人に対して看護師1人という態勢を取っています。
これまで以上に、看護師に負担がかかっている状態ですね。平成18年の医療制度改革で、病院内では看護師の取り合いのような事がありました。私どもでは看護学校を持っているので、比較的恵まれているのですが、やはり看護師に働きやすい職場を提供していかなければならないと考えました。当病院には約700人の職員がいて、そのうち女性の看護師が約450人、女医や事務職員も含めるとかなりの数の女性が働いています。どんな福利厚生が求められているかを調査しながら、女性単身寮の建て替えと、院内保育所の設立を決定しました。
― 出産後も働きたいという女性は、やはり多いのでしょうか。
藤田看護師は国家資格ですから、結婚や出産で辞めて、落ち着いたら復職するという人も多いです。でも、急性期病院では医療の日進月歩がすさまじいので、1~2年休むとついていくのが大変なんですね。院内に保育所があれば休む期間を短くでき、病院側、働く側の双方にメリットが生まれます。職員側からも、そういう要望がかなりありました。それで、せっかく作るのだから、子どものために「木造」にしたいという方向になりました。ただ、防火地域内ですから、木造で可能なのかを検討しながらインターネットで調べ、「家なら2×4ネット」というポータルサイトで辰巳住研さんを知り、電話をかけました。
篠塚突然のご連絡で正直驚きましたが、とにかく打ち合わせに伺いました。まだ一般的には「耐火建築=RC造」と思われがちなのに、ツーバイフォー工法に目がとまったということにご縁を感じましたね。ただ、私どもも木造の耐火建築というのは初めてでした。そこで、COFIと共同で耐火認定を取得した2×4協会に技術的な相談をしたり、かなりいろいろな資料を調べたり勉強をしました。いまでは、役所の担当者より詳しくなりましたね。
「あたたかさ」と「安全性」を兼ね備えた木造耐火建築
―「木造」を選ばれた理由はなんでしょうか。
藤田子ども達に「木のあたたかさに触れさせたい」の一言に尽きます。あたりの良さや木のぬくもりを知って欲しいというか。子どもは走り回りますから、転んでも木の柔らかさで大事に至らないですし、空気もいいような気がします。
篠塚設計にあたっては、子どものための施設なので、どうやって柔らかさや素朴さを出すかが最初のテーマでした。鋭角的なものは避けたいので、屋根はマンサート型(腰折れ屋根)にしました。もともとツーバイフォー工法は耐震性が高いのですが、マンサートはさらに強いので、安全性もより高まります。木の柔らかさについてですが、普段はRC造の現場にいる職人が、「ツーバイフォーの現場にいると、足首の疲れがまるで違う」と言っていました。保育士の足腰への負担や、子どもの成長のためには、絶対に木造がいいと私も思います。
藤田安全性といえば、内部の造りも細かいところまで配慮が行き届いています。自動ドアは内側からしか開かないし、ドアのカギの位置が1m50㎝の高さにあるので、子どもが勝手に外には出ることができません。トイレなどの設備も子ども目線で配置されているので、現場の保育士からも「安心で使いやすい」と好評です。
篠塚室内の設備については、「子どもの目線」を意識するために、毎日床に座ってチェックを行いました。カギだけでなく、スイッチやコンセントも高いところに配置して子どもが触れないようにしていますし、小さな子どもが暖かく過ごせるよう、床暖房を取り入れて室内の低い位置を暖めています。また、保育士からの要望で、全体を見渡せるように室内の壁に窓を設けています。構造計算は大変だったんですけれど(笑)。
「自然の癒し効果」で子どもを取りまく環境を整える
―「住環境」と「地球環境」を考えたときに、木の持つ良さについてお話ください。
篠塚私どもでは、会社のコンセプトとして「木造しか建てない」ことにしています。木が人にも環境にも優しい素材だからで、「住まいから、環境のこと、未来のこと」を考えていくのが役目だと思っています。人類は、昔から木とともに暮らしていますよね。それは、素材としての利便性だけではなく、木の持つ「癒し効果」もあるでしょう。ただ、そういったものは科学的に証明しにくいんですね。「実際に木造を利用した人達に、いい結果が出ているんだよ」というしかない。
藤田「癒し効果」でいえば、天井に明かり取りの窓があります。設計段階ではなんとも思っていなかったのですが、完成した室内に入ると、その窓から入る光の柔らかさや美しさに驚かされました。蛍光灯からは得られない、自然光の力ですね。
それと、この夏は、ウッドデッキでプールを楽しみました。子どもたちは、とてもはしゃいで遊んでいましたね。木は見た目の柔らかさと安全性と、両方を兼ね備えた素材です。自然に近いものを取り入れていけば、子ども達によりよい「住環境」を提供できますね。
篠塚木は、最終的には土に帰る素材です。「伐採して植林して」を繰り返すことで持続可能な資源となり、環境貢献も行えます。それを使わせていただくのですから、「地球の中の循環のひとつを、ちょっとお借りする」という謙虚な気持ちを忘れないようにしたいですね。
「院内保育所」と「木造耐火建築」のこれから
― 院内保育所は、これから増えるのでしょうか。また、木造耐火建築の課題は何ですか。
藤田「たけのこ」は生後6ヵ月から未就学児童までを対象にしていますが、実際は4歳児までを想定しています。というのは、就学する前に地域の子ども達と馴染ませておきたいという親心があるため、5歳位になると地元の保育園に移ることが多いからです。1~2歳と5~ 6歳では動きがまるで違いますから、有効な設備投資を行うには対象年齢を絞ることが大切です。また、「たけのこ」では夜勤看護師への対応として週に2日、24時間保育を行っています。毎年10人程度が出産しますので、利用者が増えれば将来的には毎日24時間保育になるでしょう。しかし、診療報酬が減っている時代に、院内保育所を運営することは、補助金が出ていても経営的には厳しいというのが本音です。ただ、地域の中核を担う病院が職員の定着率を上げるためには、やらざるを得ないでしょう。そういった意味では、増えていくと思います。一般には待機児童が沢山いるわけですから、民間に求めるだけでなく、国にも根本的な解決策を議論していただきたいですね。
篠塚木造耐火建築の課題は、行政ですね。認可する側が、まだ木造耐火建築の知識が少ないため、認可を受けるまでに時間がかかるんです。ただ、木の可能性はどんどん広がっています。10年ほど前から、学校や幼稚園などでRC造でも部分的には木を用いるようになっています。やはり、木の良さが見直されているのでしょう。木造耐火建築は、いわば大きなブレークスルー。この機会を逃さずに、木造でも耐火建築が可能なのだということをもっと広く伝えていきたいですね。
藤田利用者側からは、木造耐火建築に注文や課題はないですね。昨年の12月にオープンして、冬も夏も過ごしやすさを実感したからでしょうか。子ども達は何もいいませんが、働く保育士達からの高い評価がそれを裏付けていると思います。
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