ブリティッシュ・コロンビア州とアルバータ州の森林

BC州とアルバータ州の森林の植生

カナダのブリティッシュ・コロンビア州(BC)州とアルバータ州は、カナダ西部を南北に縦貫するカナディアン・ロッキーをはさんで位置し、その緯度は日本最北端の宗谷岬より高緯度の北緯49度から北緯60度となっています。

このような高緯度地域にもかかわらず、冬季降水型の気象環境から春夏期には樹木の成長に適した日照時間と豊富な雪解け水に恵まれており、この地域には世界有数の亜寒帯針葉樹林帯が分布しています。また、太平洋岸沿岸部は西岸を北上する暖流の影響を受け、冬季の気候が比較温暖となるため、温帯針葉樹林が生育しています。

BC州の太平洋岸地域にはヘムロック、ダグラスファーといった温帯針葉樹林が生育しており、この地域をコースト地域と呼称します。また、このコースト地域以東の地域をインテリア地域とよび、カナディアンロッキーを越えてアルバータ州にいたる地域はホワイトスプルースやロッジポールパインなどの亜寒帯針葉樹林が広がっています。

BC州とアルバータ州の森林の特徴

カナダの森林の所有形態は概して州有林の比率が高いものとなっていますが、とくに西部2州の所有形態はその傾向が極めて高くなっています。BC州の面積は9,480万haで、うち州有林は8,070万haを占め、州内森林面積の95%をカバーしています。またアルバータ州においては州面積6,610万haのうち3,500万haが州有林で占められ、これは州森林面積の89%に相当しています。

このように州有林の占める比率が極めて高いことは、世界中の森林・木材生産国に先駆けてカナダが保続生産体制を確立し得た最大の背景と言えます。州有林の比率が高いことは森林管理体制を一元化するのに極めて有効で、州政府が森林の保続に対して明確な方針を打ち出せば、生産と保続という経済活動の中で相括抗する事象を両立する事が可能であるという事を実証しました。

BC州の成熟林蓄積量は85億㎥、アルバータ州で20億㎥に及んでいます。しかし、このような膨大な資源蓄積も無秩序に伐採しては長期安定的な木材資源の供給は実現出来ません。カナダにおける森林はいずれの州においても社会・環境・経済の基盤として重要な位置を占めており、カナダでは早くから保続生産計画(Sustained Yield System)と呼ばれる長期継続的な森林経営計画によって森林の管理運営がなされてきました。

SPFとは

「SPF」とはスプルース(Spruce)、パイン(Pine)、ファー(Fir)の頭文字をとった呼称方法で、それぞれマツ科のトウヒ属、マツ属、モミ属の樹種を総称して表しています。カナダ西部地域におけるSPFの製材生産量は4,056万㎥で同地域の製材生産量の85%を占め、カナダ全体の製材生産量に対比しても49%と約半分を占めています。SPFが住宅建設用の木材として世界中で広く活用されている背景は、このような生産規模とそれを裏打ちする資源状況だけではありません。使いやすく節が小さく、白木系統のため加工性に富み、しかも重量比強度が非常に優れているという、建築用材として極めて重要な特性を有しているからにほかなりません。SPFはその植生が樹種混生の形で生育しており、樹種毎の強度特性も非常に似通った範囲に分布しています。このためカナダでは通常樹種ごとの分離を行わず、SPFという樹種群の製材として生産され、市場でもSPFとして流通しているのが一般的です。カナダの針葉樹製材規格であるNLGAルールがSPFという樹種群をひとつの樹種と同じような分類として扱っているのも、このような市場環境を背景としたものです。

【SPFと表示される樹種群に含まれる樹種(NLGAルールに基づく樹種群)】

SPFと表示される樹種群に含まれる樹種(NLGAルールに基づく樹種群)

【カナダ西部における樹種別丸太生産量】

 カナダ西部における樹種別製材生産量
 

MPBによる変色ー構造耐力に影響なし

SPFの材面に青いすじのような淡いしみが見られることがあります。これは、SPFが植生する森林において、マウンテン・パイン・ビートル(Mountain Pine Beatle、MPB)という昆虫がロッジポールパイン(SPFのうちの一樹種)の樹皮の下に潜り込み、羽化した後に変色菌が木部に残留してしまうために見られる変色で、カビとは全く異なるものです。ロッジポールパインがMPBによって浸食されたりすることは無く、辺材部に変色が生じるだけです。MPBによって変色した木材を第三者機関で強度試験を実施した結果、構造耐力が損なわれることは無いことも明らかになっています。また、日本農林規格*においてもカナダ製材規格**においてもこの変色は許容されています。

*枠組壁工法構造用製材の日本農林規格

**NLGA-2003