トラスの概要
トラスの概要
構造部の信頼性向上、建築コストの低減に効果あり
一般的な在来木造住宅では、構造部に屋根梁方式の小屋組を採用することが多く、スパンが長くなるに従い構造部にかかる曲げ応力も増大するため、梁の断面寸法を大きくする必要があります。トラスは部材を三角形のユニットとして構成することによりこの曲げ応力を軸力に変換。それにより構造躯体の信頼性を向上させ、部材の断面を小さくすることができ、木造住宅の高性能化・施工の合理化を図ります。

三角形の構造により、曲げ応力などの力を軸力のみに単純化
古くから存在した、トラスの考え方
在来木造住宅に使用される筋かいに見られるように、三角形の構造により部材強度を高めるという考え方は古くから存在しました。しかしトラスとして木造建築に 用いられ、特に屋根の構造躯体として一般的になったのはここ20~30年のことです。そのきっかけは木材と木材を結合させるコネクターにあります。木造住宅用のトラスは、当初合板のガセットプレートや、スプリットリングを使用した形で供給されました。合板ガセットプレートは構造計算に基づいて釘打ち本数を 規定するなどの方法で製造され、現在でも住宅用トラスや分割トラスの現場接合に使われています。一方、スプリットリングは接合面が同一平面上にならないため、現在ではあまり使用されていません。
メタルコネクターの開発により普及
メタルプレートコネクターは1952年にアメリカ合衆国の業者によって開発。その部材として使用される木材についての物理的研究も行われました。1970年 代後半から北米では製材品のイングレードテストが行われ、製材のもつ物理特性を詳細に研究。この成果を踏まえ、機械等級区分された製材品の格付方法が確立し、製材を細かく強度区分することができるようになりました。接合金物としてのメタルプレートコネクターの開発、また部材として使用される製材品の物理強度区分の確立などにより、その複合製品である木造住宅用トラスは施工性と品質安定性で高評価を獲得しました。さらにメタルプレートコネクターの開発・改良 により、接合部の剛性に対する信頼性が向上し、コンピュータ技術の発展が構造計算の迅速化を実現。どのような形状の小屋組にもトラスの架構が可能となり、 現在北米では木造住宅の小屋組の90%以上にトラスが使用されている状況です。

メタルプレートコネクターにより緊結
トラスの基本は、トライアングラー
トラスの形状として最も一般的なものは、上弦材と下弦材で作られた二等辺三角形の形状で、トライアングラーと総称されます。トライアングラーはスパンや荷重条件などに応じた斜材を使い、上・下弦材を三角形内部から補強しますが、この斜材の入れ方によりキングトラス、クイーントラス、フィンクトラス、ハウトラ スなどに区分されます。クイーントラスは小スパンの物件向けに、フィンクあるいはハウトラスは一般的な住宅の小屋組として利用。日本のようにトラスの搬送段階で大きさの制約が厳しくなるような状況においては、分割トラスとして工場で製作し現場で緊結されるケースもあります。

メトラス普及のきっかけとなった
メタルプレートコネクター
シザーズトラス&アティックトラス
天井面を構成する構造部材として、トラス下弦材が水平でないものにシザーズトラスが挙げられます。一般的に、下弦材は上弦材の勾配(屋根勾配)の半分の勾配で据え付けられますが、この勾配は構造計算によって自由な配置が可能です。仕上がりは在来木造住宅の舟底天井のようになり、室内を広く感じさせる効果があ ります。一方、中央部分を小屋裏として利用できるように考えられたトラス形状をアティックトラスといいます。小屋裏利用を図れるということで、スペースの 有効活用が可能になるため、日本では特に人気の高いトラス形状となっています。

工場生産により常に品質の安定した
トラスを供給できる
トラスの導入により構造効果と低減を図る
木造住宅の小屋組にトラスを導入するメリットとしては、まず屋根構面の構造強度の向上、荷重の分散化、内部耐力壁の省略など構造に関わるものが挙げられます が、一方で住宅建築に関わるトータルコストの軽減が可能な点も重要です。あらかじめ工場生産されたルーフトラスを導入することにより、屋根の架構時間をタルキ方式あるいは屋根梁方式の5分の1程度に短縮します。これは単に手間を削減するだけでなく、屋根下に位置する構造材を雨にさらすというリスクをも軽減 します。さらに現場施工ではなく工場で生産されるため、廃材の発生が大幅に抑えられ、現場の環境保全や事故防止に加え、廃材処理費の低減などのメリットも 生み出します。工場生産品であるため、常に均質な製品が供給され、施工者の熟練度によって小屋組の精度が左右されることもありません。建築コストを削減 し、かつ均質な性能を有する住宅を提供することは、今日の住宅産業界に求められる最大の課題。トラスシステムはその要求に的確に応えることができるシステムといえます。